ライティング 取材・インタビュー

実際に取材した内容を記事にする。取材記事の書き方を実例で紹介

2020年4月5日

記事の企画構成から実際のライティングまでを詳しく解説

ライターが実際のどのように文章(記事)を書いていくのかを、例をあげて説明していきます。

「スポーツ用品メーカーの小冊子の記事」で、依頼主は編集プロダクションという設定で話を進めていきます。

記事の執筆

企画意図を明確にする

最初に行うことは、制作意図を明確にすることです。

編集プロダクションからは、「マラソンを完走した女性を取材し、短い文章にまとまめる」というものです。

どのような記事にすればよいかイメージができますか?

しかし、このままでは不明瞭な部分が多すぎますので意図を明確にします。

「フルマラソン完走者の女性の取材、よろしく」

と、これだけでの情報では、何をどう書くか以前に、取材時にどのような質問をすればいいのもわかりません。

「小冊子の使用目的は?」

「読者は誰か?」

といった基本事項を確認します。

ランニング

30〜40代の女性を対象に、スポーツ用品メーカーがランニング用品の販売促進用として、「30代、40代からチャレンジするフルマラソン」というタイトルの小冊子を制作します。

B5サイズで16ページの小冊子。

ランニングの練習方法を解説し、後半の数ページにはランニング用品を掲載します。

同世代の女性の経験談を掲載し、これからランニングを始める人を後押し、商品の販売につなげたいという考えでした。

さらに掘り下げて確認していくと、

「ランニングは誰でも気軽にできるし、フルマラソン完走は充分に可能であるということを知ってもらいたい」

「ほとんど運動したことない女性が、フルマラソンを完走した話を紹介したい」

という主旨だということがわかりました。

ここまでわかれば、どのような内容のライティングを行えばいいのかがかなりはっきりしてきます。

内容がわかれば、インタビュー時の質問項目も自然に出てきます。

 

質問項目例

・マラソンを始めようと思ったきっかけは?

・練習はいつから始めたか?

・フルマラソンに出場したのは、いつか?

・タイムは?

・完走して感じたことは?

・日々、どのような練習をしたのか?

・週に何回くらい練習したのか?

・ランニングをするようになって良かったことは?

etc.

 

上記の質問以外に、年齢、職業、これまでのスポーツ歴などの基礎的な項目も確認します。もちろん、マラソンに関する基礎的な情報は下調べしておきます。

 

取材・インタビュー

取材対象者に会って話を聞きます。

写真を掲載する場合、カメラマンも同行し、インタビュー中に撮影も行われます。取材内容は、ICレコーダーで録音しておきます。

 

取材・インタビューの方法についての詳細は、こちらをご参照ください。

取材・インタビューに必要な持ち物(ライターに必要な道具) ●名刺 基本的なことですが名刺は必携です。 ●筆記用具 次に重要なのは筆記用具です。ペンとノートです。 自分が最も使いやすいと思うものを選びま ...

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ライティングの前に

「話し言葉」は、とてもあいまいで文法も成立していない場合がほとんどです。時系列も前後することが少なくありません。

よって、ICレコーダーで録音したものをそのまま文章化して使えることはありません。

以下は、インタビュー時の録音データを「素起こし」したものです。

 

ライター「いつ頃、ランニングをするようになったのですか?」

対象者 「ええっと、36才のときです。3年前です」

ライター「ランニングをしようと思ったきっかけは?」

対象者「なんて答えたからいいかな。椅子に座っていたときに閃いたっていうか、フルマラソンに出ようと思ったんです。そのずっと前からテレビでマラソンを見ていて、野口みずき選手はすごいなって思って。結婚して数年してから、何かやらなきゃって思ってまして。それで走ろうかなと思っていたんです。で、靴を買ったりウェアを買ったりして、準備だけはしたんですけど、その時は、結局走らなかったんです」

ライター「椅子に座って閃いたっていうのは?」

対象者「あっ、そのとき、一人用のソファみたいなものを買ったんです。私専用の。ひと目見て気に入って、でも1ヶ月くらい迷ってから買ったんです。迷ったけど、かわいいかったんで。私にぴったりの椅子で、気持ち良くてリラックスできて。その椅子に座っていたときに、なんだか急に、よし、走ろう! そしてホノルルマラソンに出よう!と思ったんです」

ライター「そう思ったのが、3年前だったわけですね?」

対象者「う〜ん。はい。たぶん。」

ライター「野口みずき選手のどんなところに影響を受け、走ろうと思ったのですか?」

対象者「小さいじゃないですか。私も。たぶん、身長は同じくらいだと思います。あんな小さな体で、すごいなって。体重はわかりませんでけど(笑)」

ライター「同じくらいの体型だから、自分にも出来るかなって思った?」

対象者「そうです」

ライター「どういうふうに練習をしましたか?」

対象者「少しずつ走って、距離を伸ばしていきました。もう大変でしたよ〜」

ライター「具体的には、どれくらいの距離から?」

対象者「最初は100メートルくらいから。でも、最初は100メートルも走れませんでした。だから50メートルくらい。心臓バクバクで。もう、大変。中高生のときは、もっと走れたのびっくり。走れなくなるんですよねぇ」

ライター「その後は、どんな練習を? 具体的に教えていただけますか?」

対象者「まず、100メートル。そして、200メートル。次は400メートル、800メートルと。100メートル走れるようになったら、200メートル。200メートル走れたら400と倍に」

ライター「100から200、200から400と倍にしていくのに、どれくらの日数がかかりましたか?

対象者「う〜ん・・・。あまりよく覚えていません」

ライター「1週間とか、1ヶ月とか?」

対象者「もう、忘れてしまいました。たぶん、そんな感じ? あまりよく覚えていません。ごめんなさい。距離によってまちまちですかね。近所を走ったり、公園まで行ったりとか」

 

以下、20分ほどインタビューは続く。

素起こしした文章はとても長くなってしまうので割愛します。

実際に記事になっている文章は、このように様々な質問をし、その中から要点をまとめ文章化していきます。

それでは、具体的な文章のまとめ方を説明します。

 

文体や記事の形式について

取材対象者の一人称で書くか、インタビュー形式で書くか、ライターによる第三者視点で書くかなどは、取材する前に決めておくことが多いですが、話の内容によっては取材後に変えることもあります。

今回の場合、ライターによる第三者視点で書くと決まっていました。

また、文字数も400文字前後という指定です。

取材・インタビューのコツのページでも説明していますが、録音したものを聞き返すことはほとんどありません。

テープ起こしをしてから内容を見て原稿を書くというプロセスは、時間も労力もかかりすぎますので、あまり行われません。

ただし、日付や数字、固有名詞などを再確認するときや、他の仕事の都合上、取材後からライティングまで1週間以上たってしまい、インタビュー内容の記憶が薄れてしまった場合などに聞き返すといったことはあります。

取材してメモを取る女の子
取材時の録音については、こちらでも説明しています。

記事の構成をまとめる 取材を終えたら、原稿の執筆です。 基本的には、原稿の構成(伝えるポイントや原稿の体裁など)は、事前に決めておくものですが、取材・インタビューの内容によっては、予想していた内容とま ...

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要点をまとめ、構成案を考える

取材時のメモをもとに、要点となる部分をピックアップし、企画意図を反映するために最も効果的と思われる文章構成を考えていきます。

・ランニングを始めたのは、3年前の36才のとき。

・マラソン大会に出ていた小柄な野口みずき選手を見て、同じく小柄な自分にも出来そうだと思ったのが走るきっかけ。

・最初のフルマラソン参加は、翌年の12月のホノルルマラソン。

・最初は100メートルも走れなかった。

・練習初日は50メートルだった。走れるようになったら、100メートル、200メートル、400メートルと距離を倍に。

・練習は週に3回ほど。

・約3ヶ月後には、10キロ走れるようになった。

・月に1〜2回、週末に長距離(15キロ〜20キロ)の練習をした。

・練習で走った最長の距離は20キロ。

・中学生の時に、ソフトボール部に所属。それ以降スポーツをしていない。

・走って汗を流すと、体の中から毒素が流れ出すような感じでスッキリ。

・走っている間は、日常のことを忘れられ、リフレッシュできる。

 

要点を整理し、構成を考え、文章にしていきます。

次は、文章例とタイトルの付け方を説明します。

 

まずは、実際に文章を書いてみる

 

あれこれ、迷っていないで、とにかく書いてみる。

ざっくりでも構わないので、勢いで書き、あとで手直しする。

「1度で完璧な文章にしよう」とすると、途中で何度も書き直したり、調べ直したりと、先に進まなくなってしまい、結果的に多くの時間を費やしてしまうこともあります。

まずは、とにかく書いてみましょう。

 

中学以降、特にスポーツをしていなかった佐藤さん。

彼女が走り始めたのは、3年前の36才のとき。

テレビで小柄なマラソン選手が活躍している姿を見て、「こんなに小さな女性ができるのなら、私にもできるかも」と思ったのがきっかけで走り始めました。

ところが最初は50メートルも走れなかったとのこと。

しかし、あきらめずにチャレンジしました。

50メートル走れるようなったら、次は100メートル、200メートル、400メートルと地道に距離を伸ばしていきました。

そんな練習を繰り返し、3ヶ月後には10キロ走れるように

練習は週に3日ほど。週末には、少し距離を長くして、15キロ〜20キロ走る練習をしたそうです。

走り始めてから、1年3ヶ月後。初のフルマラソンへの挑戦したのは、毎年12月にハワイで開催されているホノルルマラソン。

42.195キロという距離は、練習でも走ったことのない距離でしたが、日々の積み重ねがあったので完走できるという自信はあったそうです。

佐藤さんにとって未知の距離だった25キロ付近で膝に激痛が。

しかし、痛みをこらえながら、4時間37分で初マラソンを見事に完走しました。

 

取材して聞いた話をそのまま書くとこんな感じです。

しかし、400文字をオーバーしていますし、もう少し読んで面白くできそうです。

推敲をしてみましょう。

Hawaii

「走ると、汗と一緒に体にたまった毒素みたいなものが流れ出して、スッキリするんです」といきいきと語る佐藤さん。

そんな佐藤さんは、3年ほど前は50メートルも走れなかったとのことです。

佐藤さんが走り始めたのは36才のとき。

中学生以降、まったくスポーツをしていなかったので、久しぶりの運動でした。

練習初日は50メートルが精一杯でしたが、100、200、次は400メートルと距離を伸ばしていきました。

練習は週に3回程度。3ヶ月後には10キロ走れるにように。週末には15〜20キロと長めの距離を走る練習をしたそうです。

人生初のフルマラソン挑戦は、走り始めてから1年3ヶ月後、毎年12月にハワイで開催されているホノルルマラソンでした。

途中で膝の痛みを覚えたそうですが、4時間37分で見事に完走しました。

「年に1度はマラソン大会に出たいですね。目標を持つことで、日々の生活にもハリが出ます。今は走るのが大好きです!」

マラソン大会

半角0.5文字・全角1文字計算でぴったり400文字でまとまりました。

インタビューで話してくれた内容をそのまま使用するのではなく、文章にする際はある程度変えたりします。

時には「あのときは、こんな気持ちだったのでは?」と取材対象者の気持ちを想像しながら文章にすることもあります。

 

記事にタイトルをつける

次に見出しをつけます。

ライターによって異なりますが、本文を書いてからタイトルを考えることが多いようです。

「50メートルも走れなかった人が1年後に完走!」

最も簡単なタイトルの作り方は、本文からポイントを抜き出し、タイトル化することです。

「50メートルも走れない? そんな人がフルマラソンを完走できるの?」という興味の惹き方ができます。

他には、こんなタイトルも考えられます。

「私でも走れた! 50メートルからの挑戦」

「50 メートルから始めてフルマラソンを完走」

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